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12-2北川雅洋

株式会社 インプレスホールディングス取締役 北川 雅洋氏 第2回「MISSIONの見つけ方」(全4回)

1954年にグループの前身となる㈱インプレスコミュニケーションが設立されて以来なんと55年、IT業界における国内メディアソースとして複数の媒体を展開しているだけでなく、音楽業界、医療業界、デザイン業界、コミックをはじめとするデジタルコンテンツの開発などを23社のグループによるサービス事業として行っているインプレスグループ。
その国内最大規模のメディア事業戦略を統括し、統括する持ち株会社として1992年に設立された株式会社インプレスホールディングスの取締役であり、かつグループ内の㈱Impress Comic Engine及び㈱Impress Touch の2社の代表取締役兼社長と3つの要職を兼任している北川 雅洋氏に、その人生哲学を大きな視点で語ってもらうことにした。この講演に際して彼が銘打った4回にわたるテーマは「経営者やビジネスマンである前にひとりの人として」。どんなメッセージが聞けるのだろうか。

インプレスホールディングス取締役北川 雅洋氏

第2回「missionの見つけ方」
フリーランスでミュージシャンとして活動していた生活から一転、創業まもないソフトバンクに入社、孫正義氏の片腕としてビジネスマンへ華麗に転身し、そこから数々の会社で実績を上げながら現在に至るまでのキャリアを築きあげてきた北川の人生哲学には、確固たる「mission~使命」を見極めるためのノウハウが凝縮されている。また彼はそれを次代の会の参加者のみならず、誰にでも伝わる言葉を選んでこう語ってくれた。

「人生と仕事のmissionの交差点を知る、これはとても重要なことだと思います。その中で、私の経験からお話しできることがいくつかあるので、それを皆さんにお伝えしたいと思います。

一つ目は『経験から人生のテーマを見抜く方法』。人間にはそれぞれ好きなことや興味のあること、また苦手なこと、何度やっても失敗してしまうことがあると思います。自分のmission、人生のテーマを見抜く方法として、そのようなものの本質を見抜くことが重要です。

まず好きなことや興味のあること。これは自分がやるべきテーマが隠されているといえます。また苦手なこと、これは克服しなければ本当にやりたいことができないテーマが隠されています。また、何度やっても失敗してしまうことですが、これは自分がまだ本来の自分に成長していないという証でもあります。ただ何度もチャレンジすることにはそこに『本心』が隠されていることがあり、これはまた後ほど語りますが非常に重要なことでもあります。ここで間違ってはいけないことがあります。『つらい過去を忘れて、明るい未来を創造しよう』という、単なる前向きさやポジティブさだけではダメだということです。ポジティブさだけでは問題を克服できず、そこには自ら過去をしっかり見つめ直し、足りないところをきちんと認識して修正し、人間として脱皮していく智慧が必要なのではないでしょうか。

成功、失敗という概念にも新たな視点があると思っています。
成功とは『自己賞賛・自己満足・自己優位』にならないことを学ぶための人生のテストであり、試練でもあるのです。人間はとかく成功するとそれが自分だけの力で成し遂げられたと思い、ともするとそれを忘れがちですが、自分以外の助力により『生かされている』というのが真理なのです。つまり、常に感謝の気持ちが必要なのです。私の知人には企業の経営を行っている人が多数いますが、事実一度成功した後に、なぜか人間的には小さくなってしまうケースが多々見られます。上場した途端に安心して一緒に飲める友人が一人もいなくなった、という声を実際聞いたこともあります。
また、失敗に対する考え方として『失敗したことが人生の大事件ではなく『いかに失敗するか』ということが非常に大事だということでもあります。そこに気がつくか気がつかないかで、非常に大きな差が出てくると私は思うのです。

また、先ほど申し上げた『本心』に関してですが、表面的な自己認識と、本当の自分の心の関係をしっかり把握することは普段なかなか見えないものです。
人間の本心へのステップを考えると、感情・感覚の先に表面的な表現があり、さらにその表現を掘り下げていった先に本音があります。しかし本心はさらにそこから踏み込んだ領域にあるもので、それを自分で感じ取ることができるかどうかは非常に重要なことだと思います。」

従来の価値観が崩壊しつつある時代の中で、全ての人が自分のmission探しに戸惑っているだけでなく、それを見つけるための方法や考え方を模索している現代社会において、人間の本質的な部分にフォーカスした北川の言葉は、ある意味今人々が最も求めているものかもしれない、そんなふうに感じる。

「Missionを見つける方法の二つ目として『興味と経験からmissionを知る』というものがあります。
私が好きで興味のあった音楽、アート、執筆活動をしていた動機を思い返してみました。
すると、それは私の中に、表現したい、伝えたい、共感・共鳴したいという思いの他に、響働(きょうどう:互いに響き合いながら共に働く)したい、といった本質的な想いがあるからだと分かりました。

また、経験としてITの知識、接客や販売などのビジネススキル、多種多様な会社の経営に関して学んだことは、組織として事業として、大きな規模で何かを成し遂げるために必要不可欠なものだったことが分かりました。興味と経験、その2つを掛け合わせた結果導き出されたのは、グローバル的な視点や環境の中で個性あふれるエキスパート達と働くこと、つまり異文化・異才能・異感性のハーモニーを創造することが私のmissionなのだ、と分かったのです。そこで考えると、人生に無駄なことなど一つもなく、全てが深く味わうべきものばかりなのだ、ということが結論として導き出されてきました。」

成功と失敗、そして興味と経験をもって自分のmissionを知る方法について北川の言葉は、まさに本心からくるものだからだろうか、心にすっと入ってくる。次回は彼の軌跡をたどりながら、彼のビジネスに対する考えを探ってみようと思う。

(第3回につづく)

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