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11-4矢嶋弘毅

DAC (デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム)株式会社 代表取締役社長 矢嶋弘毅氏 最終回「経営ポリシー」(全4回)


インターネットが一般的に普及する黎明期ともいえる1996 年に設立されたネット広告会社の草分け、D.A.C デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社。ネット時代の爆発的成長とともに2001年にヘラクレス上場を果たし、社員数は2009年現在で 900名を超える企業へと成長したD.A.Cの代表取締役社長 矢嶋 弘毅氏に、同社の沿革と自らのキャリアを合わせて語ってもらった。

デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社
代表取締役社長 矢嶋弘毅氏

最終回「経営ポリシー」
業界内でも確固たるポジションを獲得したDACの社長である矢嶋は、2006年に起こった「ライブドア事件」に伴うIT業界の再編にも柔軟に対応し、積極的な子会社化や事業の多角化で現在まで順調に成長を続けてきた。

「2007年には九州にもオフィスを構え、売上も360億円を超えました。またアイレップとの共同出資により、リスティング広告の「レリバンシー・プラス」を設立しました。このあたりからいろいろな会社のTOB(株式公開買い付け)などがあったり、まさに業界内が再編されていることを実感しました。
昨年2008年、3月には主要テレビ5社に第3者割当増資に参加してもらい、増資を行いました。名古屋にも中部オフィスを開設しました。ネット広告費は全体で6983億を超え隆盛を誇っていましたが、まだ記憶に新しい「リーマン・ショック」が起こったのもこの年です。これは将来この業界に限らず、大きな意味をもつものだと思います。そして今年2009年、博報堂アイ・スタジオを子会社し、博報堂に第3者割当増資を実施しました。この時点で博報堂DYホールディングスが弊社株式の53%を持つ形になり、初めて親会社ができたかたちになります。」

辿ってみればあっという間の12年間だったのではないか。デジタル広告業界も、世界的不況の中でこれからまた大きな波をかぶることになることは想像できるが、そんな状況の中でも矢嶋は同社の方向性をこう語る。

「DAC全体のグループビジョンとして『e広告プラットフォーム創造企業』ということばを掲げています。基本方針として従来の代理店機能であるエージェント領域とメディア領域のみならず、DASという広告に伴う様々なサポート業務を行う領域にも進出しています。実際にこの3領域を複合的に展開している会社はそれほど数はないと思います。前回もお話しましたが、この領域の事業シナジーを見越して積極的に投資を行ってきています。」

積極的に展開していく事業を率いるリーダーとして、矢嶋には不安はないかのように見えるが、次代の会の参加者の質問に対する答えの中に、矢嶋の思いは率直に語られている。

「不安は今でもあります。最後はやはり会社として現金を持っているのは大きいと感じています。最初はケチケチでもいいんです(笑)。なんだかんだいってもそこは強い。先輩であるアスキーの西さん(アスキー創業者)にも言われました。自己採点は常に70点をキープしてきた、そんな感覚をもっています。とはいっても60点では悔しいのでそこはしっかりと頑張るんですね(笑)。」

あくまでも矢嶋の言葉は現実的。急成長にも決しておごることなく、現実的な言葉が語られる。そんな矢嶋が会社を率いる中で、最も大事にしてきたことは何だったのか。

「私のポリシーとして、昔から役職者以上の人材を大事にしてコミュニケーションをとってきました。業界が急成長していく中で人材の流通が激しかったわけですが、DACに限っては役職者以上は殆ど辞めていません。やはり会社を進めていく中で最も重要なのは人だと思っています。」

最後まで現実的な言葉を冷静に語ってきた矢嶋のコアな経営ポリシーが垣間見えた言葉だった。同社の事業規模が今後さらに大きくなっても矢嶋のこのポリシーを共有し、業界内の雄として進んでいくことだろう。

(了)

今まで撮影しなかった集合写真も今回は撮影。参加者の笑顔が印象的だ。
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