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10-3藤田守哉

CROCS ASIA PTE.LTD 日本代表 藤田守哉氏 第3回「3つのC」(全4回)


特徴のあるフォルムとその履きやすさが短期間に口コミで爆発的に広まり、いまや毎夏ごとにいたるところでその姿を見ない日はないほどの人気商品となったクロックス。一時はエスカレーターでの事故で報道された時期もあったが、現在でも人気商品として定着している。今回はその日本代表 藤田守哉氏の遍歴をたどってみたい。

第3回「3つのC

世界的な大ヒットと共に、エスカレーターの事故により実名を公表しなくてはならないという絶対絶命の危機を、適切な危機対策で乗り越えたクロックス。今回はそのリーダーである藤田が心がけている経営理念について語ってもらおうと思う。

『私が100名以上の社員を束ねなければならない経営者の立場に携わってきて『何が会社を束ねる上で大事なのか』ということを考えてみましたところ、最も重要なのは『自分の不得手を知る』ということではないか、そう思います。特に弊社は2006年の売上げが67億でした。2007年には70億、2008年には100億を超えました。私が代表として就任する前の経営陣が立ち上げてきたのですが、3050億くらいに壁があり、そこから経営手法が変わってきました。それまでは机を並べて『あれはどうなった、これはどうした』と確認ができたのですが、そのあたりからそれも難しくなり、組織として動かなくてはならなくなったわけです。

アメリカの本社は早くにそれを察知して経営手法を変えたわけです。その中でスーパーマンのような万能選手もいるのですが、多くの人は自分の不得手を気がつかないか、気がつこうとしないか、気がついても認めようとしないかだと思います。私自身営業の人間ではないので、会社が急成長するなかで営業、マーケティング、オペレーション等の専門家を採用して営業体制を強化することに専念してもらいました。

また、成長過程の中でいろいろなバックグラウンドを持った人たちが集まってきます。その中で『この会社はどこにいきたいのか、3年後、5年後何を得ようとしているのか』という明確な指針を与えてあげることが非常に重要だと感じています。でないと皆行き先が見えずに不安になってしまう。経営者としてその指針を明示してあげることに注力しました。

私どもの指針は何か、それは非常に明快に『CCC』という指針を打ち出しています。

最初のCCreed,何を信条として進んでいくのか、2つ目のCCulture,どんな企業文化をもっているかということ。そして3つ目のCCode,何をルールとして定めていくか、ということですね。ルールといってもそんなに堅苦しいものではなく『社内ポリティクスとは無縁の会社である』というようなことですね。これは非常にエネルギーと時間を浪費しますので、そのようなこととは無縁であるということをルールとして定めました。

また『一緒に働いている人間を常に信じてやろう』ということであったり、さらに『とにかくスピードを重視しよう』というようなことですね。我々が下す判断を明日に延ばすよりは今日判断してその結果が間違っていたら即座に修正する、というようにスピードを最優先して考えるように心がけているのです。そのような10項目をルールとして浸透させています。

弊社が行っている四半期ごとのミーティングでいろいろなディスカッションを行い、その場では必ずこの3つのCに関しておさらいをするわけです。

会社全体で最も上位概念であり経営理念でもある『Mission & CCC』があり、その下に『Planningプランニング』があり、さらにその下に『Execution』 実行するというピラミッド型の図を必ず見ながら確認することを毎回行っています。よく日本人の会社だからこのようなことは何度も言わなくても分かるのではないか、ということをよく言われますが、弊社のように急成長をした会社においてはそんなことはなく、新しい人が増えていく中で、このような会社の経営方針を明示化することを繰り返し行っていくことで補強していくこと、それがとても大事だと感じます。それを繰り返す中で、自然なものとして定着していくのではないかと思います。

そして最後に『会社の顔』として私がどのような言動をしているか、社外のみならず社内でも見られている、そういう意識を常に忘れないように心がけています。

日本でも内部統制の為のJ-sox法というようなものがあり、非常に面倒なわけですがそういったものの有無に関わらず、常に自らが経営者としてどう見られているかを考えるようにしています。」

シンプルで分かりやすい指針を常に繰り返し検証し、共有する。従来「察しの文化」といわれてきた日本ではあまりなかった手法ではあると思うのだが、グローバルな企業競争の現代において、常に即断即決が求められつつも企業文化をも醸成するうえで、注目すべき考え方ではないかと感じた。

次回最終回では、この講演の参加者からの質問に答えた藤田の言葉の中にあるその経営理念をさらに深く探ってみたい。

(最終回に続く)

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