インフォテリア株式会社 代表取締役社長 平野洋一郎 最終回「大波を超えて」(全4回)

IT業界にいる人間であればほぼ殆どの人間が聞いたことがあるであろう「XML」。
多様化するWeb2.0時代のデータ管理において、拡張性の高い運用を行う場合にはもはや標準といってもいい言語だ。
今年はついに「広辞苑」に掲載されたほど普及した技術だが、そのXMLを専業としたソフトウェア開発会社を1998年創立し、昨年東証マザーズに上場、XMLのソフトウェア市場においてマイクロソフトを押さえ堂々の2年連続日本一のシェアを獲得しているインフォテリア株式会社。今回はそのインフォテリア株式会社 代表取締役 平野洋一郎のソフトウェアにかけてきた半生を綴っていきたい。
 

インフォテリア株式会社 代表取締役社長 平野洋一郎氏

最終回「大波を超えて」
日本でXMLの圧倒的な技術力をもとに快進撃を続けてきたインフォテリアだが、代表である平野自らの軌跡を振り返ると、本人いわく「決して順風満帆ではなかった」という。
その経験の中で彼が確立した全部で3つからなるインフォテリアの経営信条について、本人のことばで補足しつつ語ってもらった。

1.「経営の根幹は信頼である」
事業は自分だけでは成り立ちませんから、信頼はすべてに優先します。また、大切なことは、信頼されるから信頼するのではなく、まず自分から信頼する姿勢を持つことです。
2.「未来は予測するものではなく作るものである」
「パソコンの父」とよばれるアランケイ氏の言葉ですが、私にとって大きな意味をもちます。好運なことに、ITの領域ではまだ発展が著しく、誰でも未来を作ることにかかわることのできる可能性があるのです。
3.「すべての判断に説明可能な理由をもつ」
これは経営判断のみならず、社員一人一人の日々の活動にも重要なことです。

また、平野は社員に対してよく話している3つの点についても触れた。
1.「8割OKならGo」
プランにおいて場合、8割がたOKと思える場合はGOという意味です。残りの2割のために情報を集めたり検討の時間を取ったりすることにより多くの時間がかかります。間違っていたらやり直せばいい。まずやってみることが大事です。
2.「全員賛成ならやるな」
新規事業において全員賛成するようなものは大企業の会議室でも承認されるような、平凡なものが多いのです。大企業もやるようなことをベンチャーがやっても意味がない。私たちインフォテリアが取り組むべきプランは、全員が賛成するようなものではなく、反対意見もあるようなとんがったものであると考えています。
3.「役職で呼ばない」
ロータス時代の経験に基づいたものですが、英語でのコミュニケーションにおいては社長でも「You」ですよね。よく役職で呼ぶ組織もありますが、アイデンティティは個人の名前にこそ存在するのです。』

それぞれが平野自身の経験に基づいて確立されたものだけに、説得力がある。
興味深いのは「全員賛成ならやるな。」自ら率いるインフォテリアの事業スタンスを見極めていくうえで、この経営信条があるからこそ、XMLという特化した部分でマイクロソフトなどの巨大企業をしのぐ実績を確立しているのだろう。

インフォテリアは、これからどのようなビジョンをもって未来へ進んでいくのだろうか。

『インフォテリアを起業して10年がたち、今は次の10年の構想を打ち出し、それに向かって進みはじめています。
まず第1に、弊社の収益の柱となっている主力ソフト「アステリア」の成長です。この分野はこれから5年で現在の10倍の企業が採用する成長分野だと考えています。
そして第2に「アステリア」の次の柱となる主力ソフトの開発ですね。XMLをベースに「アステリア」のほかに2本目、3本目の柱をつくることに注力しています。それは発想と挑戦の道のりですね。
第3の方向は世界展開です。次の10年では具体的なプランとして世界市場にチャレンジします。
さらに、インフォテリアが発展していく為に、新陳代謝のDNAを社内で育んでいきたいですね。そのことによって最終的に私はインフォテリアを100年続く会社にしたいと考えています。この業界でいえば、マイクロソフトでさえまだ35年ですからね。
この業界では技術の進歩による大きな波が何度かあり、その過程で波に乗り切れずに多くのソフトウェアメーカーが潰れてきました。私たちは、その波を超えて100年続く企業体質をつくっていきたいと考えているのです。
インフォテリアは、「発想と挑戦」、「世界的視野」、そして「幸せの連鎖」という3つのビジョンを掲げ、これからも進んでいきたいと思っています。』

最後に彼の口から出てきた言葉は、やはり情熱からくる熱いものだった。
インフォテリアは、次に来るべき大きな時代の波に対してもXMLという武器と「肥後もっこす」の熱い想いが作り上げた経営信条をもって乗り越えていくことだろう。
(了)
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