株式会社ディーバ 代表取締役社長 森川徹治 最終回 「mission for DIVA」(全4回) 日本で2000年より本格的に導入された「連結会計」制度。企業の統廃合とグローバル化の流れのなか、親会社を中心にした子会社、関連会社のグループ化に伴う会計処理のニーズを追い風に、1997年の設立以来大手企業を中心に業績を伸ばし昨年2月ヘラクレスに上場した「株式会社ディーバ」の森川徹治。 最終回の今回は、森川率いるディーバのミッション、これからの方向性を語ってもらった。 株式会社ディーバ 代表取締役社長 森川徹治氏 第4回「mission for DIVA」 ディーバに訪れた業績悪化という大きな試練によって精神的に追い込まれ、体が動かなくなるまでになった森川は、逆転の発想から体を徹底的に鍛え上げることで立ち直ってきたという。 森川自身の状況に比例して、業績も回復し、現在は力強く未来を見据えて躍進を続けるディーバはどこに向かおうとしているのか。 『私は「100年企業の創造」というビジョンをずっと話しています。決して100年で終わってしまうということではなく、100年という次代に繋がる仕組みつくりを見越していかなければならないという意味であえて100年という言葉を使っています。スペインのガウディが設計したサグラダファミリアのイメージです。その100年をさらに10年ごとに区切って具体的なビジョンを定めており、最初の10年が「Go public」でした。「Be public」の前の段階ですね。その結果として昨年IPOを実現することができました。 そして次の10年として「Go Global」を掲げ、今2年目に入っています。 「Go Global」のコンセプトとしてはどんなに小さくても公器であり、どんなに小さくても世界に通用する会社になろう、そして作る人間は多くが海外の人でもいいじゃないか、それが日本の企業として継続的に成長していく考え方なのではないか。私はグローバルの意味合いをそのように捉えてやってきています。』 本当の意味でのグローバル化とは何か?というスタンスで森川の経営哲学は、海外の人間を積極的に取り入れていくことで内部的にも具現化されている。さらに彼は自らの経営哲学をこう語る。 『日本がバブルのときのケースや現代のサブプライムの問題がありますが、これは誰も責任を持たない利益を見込んで株価が付いている状況であり、それはただ誰も返さない、未来から借金をしているにすぎないわけです。経営者が経営の結果としての純資産をコミットしているかどうか。ここが最も重要なのだと考えています。そういった視点で見ることで、その会社の本当の力が見えると思うのです。預かっているもの、それはお金に限らず、一人ではできない会社というものに対して社員の人生の貴重な時間をも預かっている、人的な資産も含めて会社の資産であると考えるのです。』 大盛況の会場 静かな熱気が立ち込める 客観的にはまさに自らを追い込んでいるようにすら感じるほどのストイックな側面を感じるが、それはあくまでも会社を公器と位置づける彼独自のスタンスなのであろう。 そんな彼が「mission for DIVA」と名づけ、会社の使命と考えるところはどんなところなのか。 『本当の経営とは何なのか。それを本当に具現している例がまだまだ少なく、まだまだ偉いとかお金持ちなどというイメージが払拭されていないと思いますが、私は全く違うと考えています。そこで経営というものを突き詰めると「こんなに大変な仕事はない」と感じます。いろいろな関係性の中で利益を出さねばならない。そんな大変な仕事をサポートする為に、人間でいう体温計や血圧計のような「企業の健康状態」をしっかりと経営者が見極める為の会計情報をしっかりと測定する経営情報システムを作り上げ、広く世の中に普及していくことがミッションであると思います。』 そのような使命感をもって取り組んでいる森川にとって、日本のソフトウェア市場はどのように映っているのだろうか。 『以前私が在籍していた会社では、手作りのカスタムソフトウェアを作る仕事に携わっていましたが、他のほとんどの部署は、非常に高価な海外のパッケージソフトウェアを提供する仕事をしていました。 そんな中でサービスの価値の源泉であるノウハウの集積物がソフトウェアであることに気がつき、その社会資本の蓄積であるソフトウェアがすべて海外のベンダーにノウハウとして吸い上げられていることに疑問を感じました。優秀な人間が外資のベンダーに引き抜かれ、お客様に一見貢献しているように見えるけれど、それは全て海外の社会資本として蓄積されてしまう。あえて言葉を選ばずに言わせて頂くと「これは知財の流出ではないか?」と感じてしまったわけです。あくまでもそれはバランスの問題でありますが、グローバル化している社会の中で、日本独自の社会資本としての価値の源泉を次代に残す必要があると感じ、あえてソフトウェアパッケージにこだわりたいと思ったのが創業のきっかけでもあるわけです。 そのような志をもち、財務資本だけにとどまらない社会資本としての人的資産を大事にしつつ堅実な経営で今後30年、40年と続いていく会社でありたい、そう思いながら山を一歩一歩登っていっているというところなのです。』 ブレのない自社の緻密な戦略を語りつつも、会社を公器と位置づける森川の口からは「日本の社会資本」「次代の価値源泉」という言葉が聞かれる。このグローバル化した社会の中で、世界に通用する戦略を立て、確実に成長しながらも、日本人としての誇りを忘れずにいたいという森川の熱い「想い」を感じる。 本当の意味でのグローバルカンパニーとは何か?という問いに関して、森川率いるディーバはこれからもあくなき挑戦を続けながら、スペインのサグラダファミリアのように100年構想を実現していくことだろう。 |