株式会社ディーバ 森川徹治 第2回「連結会計システムにおけるディーバの戦略」(全4回) 日本で2000年より本格的に導入された「連結会計」制度。企業の統廃合とグローバル化の流れのなか、親会社を中心にした子会社、関連会社のグループ化に伴う会計処理のニーズを追い風に、1997年の設立以来大手企業を中心に業績を伸ばし昨年2月ヘラクレスに上場した「株式会社ディーバ」の森川徹治。 第2回目は、普段聞き慣れない「連結会計」の仕組みと、ディーバの戦略について語って頂いた。 第2回「連結会計システムにおけるディーバの戦略」 通常財務関連の仕事をしていなければ、あまり聞くことがない「連結会計」。森川率いるディーバは、なぜそのような領域へ同社の舵をきったのか。まず森川がその仕組みについて語る。 『連結会計という言葉は一般的な認知がまだされていないと思いますが、最も重要なポイントは、従来の会計システムとは全く異なる種類のものだ、ということです。 まず、通常「会計」といわれている「一般会計」は、取り扱っている情報最小単位が「仕訳」つまり「取引」であるのに対し、連結会計の場合「財務諸表」が、情報最小単位になるというのが最も大きな違いのポイントです。一般会計に関していえば、過去を検証するための財務諸表を、連結会計の場合は将来に向けた経営の意思決定を行うための情報最終単位になるという点が、最も異なります。』 欧米では古くから一般的に導入されてきた連結会計システムだが、日本での本格的な導入は歴史が浅い。2000年に公開企業に連結会計が義務付けられたことにより、新たな事業領域が拡がることに対して森川はどのようにディーバの戦略を立てたのか。 『連携会計の場合は会社ごとに設計されたシステムをそのまま活用しつつ、それらをまとめて大規模なシステムとして連携させるというSOAの思想に近いです。 別の言い方をすれば、企業経営システムとしてSOA的な発想をもってアプローチできるのが連結会計システムであるといえます。従来のERPはニーズに応じた積み上げ式のもので、なかなかそのような概念は作りづらいわけですが、SOAの発想に基づいていえば、システム的な観点、会計業務、そして日本企業のグローバル化に伴うドメインの変化があるはずです。それらの視点から見ていく必要を感じた時に、連携会計システムの領域が伸びるのではないかと考え、そこに特化して弊社は事業を進めてきました。 弊社が掲げた「GO GLOBAL」の事業コンセプトに沿ってどのように階段を上っていくかと考えた場合、日本で世界に通用しているグローバルカンパニーに使ってもらい、ノウハウを吸収していくのが最も早いであろうと考え、日本の大企業を中心に営業をかけていきました。 その結果、現在弊社のシステムを使って頂いているお客様はグループ会社も含め約570社ありますが、現在の日本で時価総額トップ50社のうち26社が弊社の製品を使って連結経営を行っています。 この26社の傘下には、海外での子会社も含め全体で2万社を超える会社が連なっておりますが、戦略としてまず最初の10年は本社の実務担当者の方々に弊社の製品を使って頂き、満足して頂くことに主眼をおき、その後10年をかけてじっくりと時間をかけながら子会社へのグローバル展開をしていくという構想です。 現在弊社の売上は本年前期30億円で、重要なのは増減率です。弊社は20年以上に渡って複利で20%成長を継続的に行っていくことを大前提に組み立ててきています。マーケットの影響を受けずに済むように、羅針盤のようにこの目標を立てて、大枠は変えずにポートフォリオに適宜修正を重ねるという戦略でやってきています。 しかしこの戦略を構築するまでには、1つのストーリーがありました。これは、創業から5年の間、売上、損益、人員、お客様の数という4つの指標において全てをプラスマイナス5%で収めてきていた私の「驕り」が大きな危機を生み、その時の経験から組み上げられた戦略だったのです。』 前回講演したテックファーム 筒井と同じく、ディーバを創業して以来、5年目まで計画通りの順調な舵取りをしていた森川にも、試練が訪れたのだ。大きな波に乗るドラマの中には必ずといっていいほど大きな試練も同時に訪れるのが興味深い。残り2回にかけて森川率いるディーバがその試練をどのようにクリアしていったのか、そしてこれからの同社のビジョンについて綴っていきたいと思う。 |