シナジーマーケティング株式会社 社長 谷井等 「谷井流経営論:循環経営」

大阪会場での記念すべき一回目は、CRMソリューションを手がけるシナジーマーケティング株式会社の谷井社長をお迎えした。

同社は、2005年6月よりSaaS形式で顧客データを統合管理するCRMソリューション『Synergy!』を提供しており、約900社の導入実績を誇る。消費者の行動履歴や属性を管理するためのマスターデータベースを中心に企業のマーケティング活動を支援するシステムである。

1社の平均の利用金額約5万円/月であるが、クライアント企業の40%は上場企業と、そのシステム必要価値を見極められるリテラシーの高い企業が多いのが特徴。
谷井が講演冒頭の自社紹介の中で、クライアントの目線に立つこと、クライアントのROIが重要であると話した。クライアントが我々に希望することは、システム投下に対しての効果。それが適さなければ契約が終わる。また、ASP事業だけではなく、Agent事業、SI事業の展開もそれぞれASP事業の補完関係として同社の強みを大きくしているのだと言う。

同様な事業展開を行う他社も少なくない。しかし、そのまま流ちょうに話す谷井の起業経緯を聴いている皆を驚かせるとともに、同社の強みの形成がまさに谷井の経験に裏打ちされた強固なものだと理解できた。

第一の創業~友人の死と決意
谷井の大学生時代、1995年の阪神大震災の経験は、その後の人生を大きく変える起業のきっかけを与える。前日まで酒を酌み交わした最も親しい友人を亡くしたのだ。人間の人生ははかない。この経験はは、谷井に“自らができることをできる時にせねばならない重要性”を気付かせた。
その後、NTTに入社。法人営業を経験。しかし、早々に退職することになる。“自分の考えで、自ら行動したい”という衝動がかれを行動させた。大きな組織の中で、自らの考えを動かすスピードと成果に物足りなさを感じてしまった。

NTT入社して1年弱で退職、1997年、具体的な事業プランや機会を見いだせないままにいた谷井は父親の実家の洋服店で働き始めた。長きに渡って当時赤字だった店を黒字することがミッション。谷井は見事にそれを持ち前のアイデアと行動力で達成する。
同年秋、いよいよ自身のビジネスアイデアで起業する機会がやってくる。メーリングリスト作成サービスを主事業とした合資会社デジタルネットワークサービスを設立。このサービスは、2000年までに競合他社を差し置いて、約80万人を集めた。その成功の秘訣は、現在にもつながるサービス理念「101点のサービス」であると谷井は力説する。お客様がサービスの選択、利用時に持つ”期待する気持ち(期待値)”、その期待に1点でも上回るようなサービスを行うこと。それが「101点のサービス」である。

2000年、株式会社インフォキャストを設立、4億円を調達するも、結局、楽天に売却。谷井は、これからの経験から、『人からいただいた恩に対してきっちりとお返しをしよう。』と心に決める。

第2の創業~堅実な経営から上場を目標に
その後、インデックスデジタル株式会社を設立。またもや新しい機会。地に足を着いた黒字経営とその上での高成長企業を目指す。上場に関しては、とりあえずは考えない。従業員との信頼関係の構築、ビジネストレンド、顧客ニーズの把握など、数々の失敗も経験しながらも重要な経営ポイントを見いだす。それらが、アライアンスパートナーとの出会い、経営統合が成功要因となり、現シナジーマーケティングとなった。

組織も売上も大きくなったシナジーマーケティング、それにふさわしい目標を谷井は決意する。
『信用力の獲得のため、上場を!』
上場ミッションを掲げ、企業理念の浸透、社会貢献の定義など、更なる経営課題と正面からぶつかるも、現場からその解を導き出し、2007年11月上場を果たす。それは、最初の起業からわずか、10年ほどである。

最後に谷井は、<お客様>・<会社>・<従業員>3つのドメインが良好な関係で循環する姿「善循環の経営」を理想の経営スタイルであると確信を持っていると話す。
常に利害関係者の目線に立つことを自然に意志決定プロセスに取り込んできた結果であろう。その経営哲学は実家の洋服店の前を通り過ぎるお客様を見ることから既に見いだしていたのかもしれない。

今後のシナジーマーケティングの発展と好循環をこれからも期待したい。(了)

文責:福永充利


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