テックファーム株式会社社長 筒井雄一朗 第1回「起業の礎」

今年3月にヘラクレスへ上場したITサービス開発企業「テックファーム株式会社」
プロフェッショナルな技術力に裏づけされたITサービスを提供し「顧客の価値創造を実現する」という理念を掲げ事業開始から10年で上場を果たした。
そのテックファームを率いる筒井雄一朗が「次代の会」で上場後初の講演を行った。

第1回 起業の礎
テックファームの事業開始は1998年。登記上は1991年となっているが、休眠会社を引き取る形で事業をスタートしている。

「実は創業当時はお金が無く、好意で場を提供していただいた休眠会社を母体として、1ヶ月分の社員の給与だけのお金を借り受けて、飲み屋の片隅で雨漏りのするオフィスからはじめました。前職の会社であったハイパーネットが倒産し、その当時はインターネット、オープンソースが事業システムで利用されている事は少なかったのですが、必ずそれらがITの中心となり、そしてそこでは幅広い技術を応用するプロフェッショナルなITサービスが求められると考えて起業しました。」

「サラリーマンだった自分がベンチャーの世界に身を投じたきっかけは、27歳で結婚後すぐに子供を2人授かったことがわかったとき、この子達の人生に合わせて、自分がどうあるべきかを考えていたとき『ん?子供が大きくなったら、いろいろな意味で思い切ったことができなくなるかも』と考えてしまい、当時シリコンバレーのダイナミズムに触発されていたこともあり、それならまだやり直しがいくらでも効く、今思い切ってやってみよう、と考えたことです。」

子供が生まれると守りに入るのが常識的な考えだと思うのだが、筒井は逆にそれでベンチャービジネスの世界に入ることを決意するというタイプの男だった。しかしそれも決して順風満帆の道のりではなかった。

神戸大学を卒業後、キヤノン㈱で情報システムを研究した後、1993年㈱ハイパーネットに入社。入社間もなくCTO(最高技術責任者)としてハイパーシステムという安価なインターネット利用を可能にするメディアサービスプランを開発・展開した。多くが従量制でインターネット接続環境が整備されていない当時にしては非常に画期的なサービスであり、その他のメディア事業でも収益が上がっていた。

しかしこの後、順風満帆に見えた筒井の人生にとって最大の試練が訪れることになる。CTOから副社長に就任し、US Nasdaqへの上場を目指していたハイパーネットが1997年に倒産したのだった。しかしこの倒産を通して得た経験が筒井のテックファーム起業に対して最大の教訓になる。

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